第33回
歌会湘南藤沢五行歌会
良元
2024年8月23日(金)
八月も第4週の金曜日ともなると、一昨日の雨が長かった炎暑を少し落ち着かせたのだろうか?日射の中に夏の終わりを予告するような涼しい風が一瞬通り過ぎたように感じ、江の島方面へ向かう電車内に海水浴の家族連れがほとんど見当たらなくなった。子供たちは夏休みの最後の宿題に追われる日々である。
本日の出席者は十名 紙上参加一名
冨樫千佳子(一席)
敵(かたき)のように
着て 着て
着古してから
処分したくも
しぶとい普段着
女性たちからは、そうよそうよ、の同調の声多く、もういい加減に捨てようと思いながらも自分の分身のような存在であり捨てきれない。
敵のようにという表現のインパクトが強くこの歌を引き立てている。敵のように着古しの表現がぴったりで、作者の技量が見えるとの評
作者はもう何十年も昔、妊娠した折に母が手作りしてくれた夏着三着の気心地が良く、その時のお腹の子がもう父親になった今も、とっかえひっかえ引っ張り出して愛用していると説明。
内藤雅都代(二席)
道端に
蚯蚓が
乾涸びて
まるで錆びた
折れ釘の姿
今の季節、蚯蚓を大勢の蟻が群がって巣に運んでいく姿をよく見かけるが、干からびた姿を「折れ釘の姿」と表現したことがぴったりで
何気なく見過ごしてしまう情景を歌にした作者の着眼力に脱帽。
今年の炎暑、下手をすれば人間だってこんな姿になってしまう可能性もあるかも知れないとひそひそ話も聞こえてきた。
大塚ケイ (三席)
訪ね来る人も無し
墓地の古木に
へばりつく
空蝉 哀し
合掌
旧のお盆の墓参りも過ぎ、供えた花も枯れてしまい暑さで訪れる人もなく、静まり返った墓地に蝉の姦しいい声だけが響く。目に見えるような情景を、空蝉哀しと表現した作者の気持ちが伝わってくる。
五行目の合掌がお墓の、無き人に向かってなのか、この世の短い儚さに対してなのか、お聞きしたかったが、先月も紙面参加で見事二席の作者は、この炎暑を避けて自宅からの参加。
来月は気持ちの良い涼しさが訪れ、元気な姿を見せてくれることを期待しています。
出席10名
紙面参加1名